2018年9月28日、池井戸潤原作の経済小説「下町ロケット ヤタガラス」が遂に発売されましたね。
どれだけこの日を待ちわびたことか。
Kindle版を事前予約していた私は、28日の朝にはダウンロードを完了させ、スキマ時間を活用してその日のうちに読了。
「下町ロケット ヤタガラス」は期待していたとおり、シリーズの最新作としてふさわしい作品でした。
というわけで、今回は「下町ロケット ヤタガラス」を読んだ感想について書きますね。
復讐、陰謀が渦巻く「因縁対決」
「下町ロケット ヤタガラス」は、前巻の「下町ロケット ゴースト」の続編にあたる内容となっています。
ギアゴースト社長・伊丹の突然の裏切り行為によって、今までの苦労が水の泡となり、苦境に立たされてしまう佃製作所。
伊丹と袂を分かち、ギアゴーストを去ることになった天才エンジニア・島津。
かつて帝国重工に深い因縁を持つダイダロス社長・重田。
そして帝国重工の次期社長候補・的場俊一。
それぞれ過去になんらかの「因縁」を持つ人物ばかり。
今回は物語開始の冒頭から復讐、陰謀が渦巻くという、これまでのシリーズにはない緊迫感が漂っています。
まさに「因縁対決」という言葉がピッタリきます。
気になる天才エンジニア・島津の今後は?
前巻「下町ロケット ゴースト」のラストで衝撃的な形でギアゴーストを去ることになった島津。
前巻「ゴースト」を読み終わった時点で、個人的に一番気がかりだったのが、この島津の今後がどうなるのか?というところでした。
天才エンジニア・島津ですが、おそらく大部分の人が思い描いていたであろう立場に身を投じることになります。
少し焦らされるところもありますが、予想していたとおりの運びになったときは、読んでいてとても胸が熱くなりましたね。
やっぱり下町ロケットはこうじゃないと。
伊丹、重田、的場。彼らに共感できるところもある
過去に深い因縁を持つ次の3人。
- 伊丹(ギアゴースト社長)
- 重田(ダイダロス社長)
- 的場(帝国重工次期社長候補)
彼らは過去の因縁に囚われ、復讐心に身を焦がし、様々な陰謀や策略を巡らせていきます。
しかし、彼らは単純な「悪役」というわけではなく、彼らの生い立ちに共感を覚える部分も多かれ少なかれあったりします。
結局、どういった人生を歩んでいくのかは本人の意思や選択によるところが大きいのですが、周りの環境による不可抗力の部分も当然あるわけです。
もしも私が彼らと同じような立場だったら・・・と考えると、彼らの思想や行動にも納得してしまう部分もあり、読んでいてとても考えさせられるところもありました。
だからといって、その行動が許されるというわけではないんですけどね。
殿村の父・正弘に脱帽
前巻「下町ロケット ゴースト」で佃製作所を退職することになった殿村。
退職の理由は高齢の父・正弘が営んできた農業の後を継ぐためです。
もともと人付き合いが苦手だった殿村は、サラリーマンとしての生活に疲弊していたことと、父・正弘の農業に賭ける情熱の大きさに心打たれ、農業を継ぐことを決意したんですね。
まさかの展開に読んでいて私も驚いたわけですが、この殿村親子は「ヤタガラス」においてもしっかりと出番が用意されています。
むしろ「ヤタガラス」こそ本番です。
そして読んでいて私が一番感動したのが、父・正弘の農業に対する想いです。
「頑迷」という言葉がふさわしいように思われていた殿村の父・正弘ですが、佃達の新たなる提案を聞き、その胸の内を語りながら涙を流すシーンは最高に心に響くものがありました。
また最新技術を使った新たな取り組みに対しても、高齢にもかかわらず貪欲に勉強するだけでなく、勘だけに頼ってきた過去の自分のやり方を反省するなど、父・正弘には脱帽するしかありませんでした。
お金儲けは大切だけど、信頼はもっと大切
社長の佃をはじめとする、佃製作所はとても気持ちの良い人達が揃っています。
そんな佃と熱い信頼関係で結ばれている帝国重工の財前部長もまた、人との繋がりを大切にする好人物。
お互い会社で利益を追求する立場にあるので、「お金を儲ける」ということに対してもシビアな一面を持ち合わせています。
しかし彼らは「お金儲け」以上に人との「信頼関係」をとても大切にしています。
佃も目先の利益に飛びつくようなことはせず、重要な決断をするときには必ず相手に筋を通しますし、財前も信頼している相手にはしっかりと礼を尽くします。
今回の「下町ロケット ヤタガラス」においても、その考え方は変わっておらず、読んでいる私も反省すると同時に気持ちが引き締まるような気持ちになりました。
佃製作所はいつも「ものづくり」の王道を行く
今回の「下町ロケット ヤタガラス」においても佃製作所は揺らぐことなく「ものづくり」の王道を突き進みます。
競争相手であるライバル社がコケれば、こちら側は得をする、というのが当たり前の考え方だと思うのですが、佃製作所は違います。
ライバル社がコケれば、その製品を買ったお客様が困る。
普通なら「じゃあ、こちらの製品を買えばいい」となりますよね?
では、簡単に買い替えることができない製品だった場合はどうなるのか?
当然、困りますよね。
佃製作所の「ものづくり」とは、たとえライバル社の製品を購入したお客様であっても、困っている人がいたら助けたい。
佃製作所の「ものづくり」とは、そういった理念が根底の上の成り立っているのです。
そしてまた、帝国重工の財前部長も立場は違えど、大企業という立場から社会の規範となるべく救いの手を差し伸べることも大切だ、という考えを持っています。
「下町ロケット ヤタガラス」での彼らの大命題は「これからの農業を救う」ことにあります。
「自社の利益」という狭い視野だけでなく「農業全体」という広い視野を見据えた彼らの「ものづくり」の精神は、読んでいる私も少なからぬ衝撃を受け、とても感動しました。
まさに「下町ロケット」の真骨頂ともいえるでしょう。
これからも佃製作所は「ものづくり」の王道を邁進し続けること間違いなしです。
まとめ
「下町ロケット ヤタガラス」を読んだ感想について書きましたが、いかがだったでしょうか?
今回の「ヤタガラス」も「下町ロケット」シリーズにふさわしい内容となっていました。
シリーズを重ねるごとに成長し続けてきた佃製作所は、これまで読み続けてきた中で一番力強く、頼もしい存在感を放っていて、読み終わってからすぐに「次は何に挑戦するんだろう?」と思わずにはいられませんでした。
「下町ロケット ヤタガラス」は「下町ロケット ゴースト」とセットで読む作品となっていますので、もしもまだ「下町ロケット ゴースト」を読まれてないのでしたら、ぜひ「ゴースト」から手にとって読んでいただきたいですね。
読むと明日の勇気が湧いてくる。
「下町ロケット」はそんな作品なので、今回の「ヤタガラス」も超オススメですよ!
そして10月14日(日)からはじまる新ドラマ「下町ロケット」を楽しみましょう!
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