ドラマ「義母と娘のブルース」がとうとう終わってしまいましたね。
「ぎぼむす」の原作となるコミックスはドラマ化が決まるまでは絶版されていた幻の作品。
しかも4コママンガということもあり、個人的にはよくドラマ化したものだな~と感心していたのですが、蓋を開けてみると原作を上回るくらいの素晴らしい出来でした。
というわけで、今回は「義母と娘のブルース」の最終話を見た感想について書きますね。
麦田店長やっぱりダメだった
原作コミックスから様々なアレンジにチャレンジしているドラマ「ぎぼむす」ですが、個人的にとても気になっていたのが麦田店長と義母・亜希子さんのゆくえ。
原作コミックスでは麦田店長のプロポーズを断ってしまうのですが、ドラマではどうなんだろうか?
最終回のひとつ前の回の麦田店長の思いの丈を伝えるシーンは本当にグッとくるものがありました。
「もしかしたら?」という、ちょっとした期待と不安を持ちながら見ていたのですが、亜希子さんの答えはやっぱりNO。
なんだかんだいっても原作において重要な部分に対しては忠実なんですよね。
ここでも回想で登場するのはやはり夫の良一さん。
今回、夫の良一を演じた竹野内豊さんは本当に素晴らしい演技をなさっていたと思います。
亡くなってしまったあとも、ちょくちょく登場する回想シーンは、見ていて目頭が熱くなるものがありましたね。
ドラマ「ぎぼむす」は原作の押さえるところは押さえ、変えるところは変える。
そして感動的なシーンはより感動的に。
このあたりのさじ加減がドラマ「ぎぼむす」はとてもうまいんですよね。
麦田店長にはお気の毒なことでしたが、やっぱり亜希子さんが断ってくれて本当に良かったな~と感じた次第です。
転職と受験をめぐる「義母と娘のブルース」
原作では描かれることがなかったみゆきの大学受験が、ドラマではがっつりと描かれています。
受験する当の本人はいたって落ち着いているのに対し、何度も受験番号や持ち物を確認する亜希子さん、完全にテンパってます。
完全にドラマオリジナルのシーンですが、とてもこの親子らしい会話だな~と感じました。
受験会場でみゆきを見送ったあと、亜希子さんはかつての良一の上司、笠原部長からヘッドハンティングの話を持ちかけられます。
良一が亡くなってからも、こうやって気にかけてくれる笠原部長は本当にいい人ですね。
ヘッドハンティングの話に興味を持つ亜希子さんでしたが、勤務地が大阪ということで、断ってしまいます。
頭を下げてお詫びする亜希子さんでしたが、突然気を失って倒れてしまいます。
亜希子が倒れた知らせを麦田店長から聞いたみゆき。
実の母親、実の父親である良一に続き、今度は義母の亜希子さんまで。
みゆきの人生はまさに「お別ればかりのブルース」。
亜希子がいなければ、それこそ天涯孤独の身になっていたみゆきは、そんな「お別ればかりのブルース」に抗うかのように、亜希子のいる病院へと走り出します。
「そんなブルースはくそくらえだ」と。
このときのみゆきの胸中は想像するだけで、胸が締め付けられるような気持ちにさせられてしまいます。
みゆきを大切に思うがゆえの「義母と娘のブルース」
病院に駆けつけたみゆきが聞いた亜希子の倒れた原因、それは「過労」。
良一の病気のことを秘密にされていた過去を持つみゆきは、その「過労」という言葉をどうしても信じることができません。
それも無理ないですよね。
みゆきの周りにいる大人たちは優しいひとたちばかり。
みゆきのことを思いやるからこそ、良一の病気のことを隠していたわけですから、みゆきからすると逆にその「過労」という言葉を信用することができないのでしょう。
病院の関係者から「過労」の説明を受けてやっと納得するみゆきですが、それだけ父・良一のことはみゆきに大きな影を落としていたんですね。
亜希子さんを思うがゆえの「義母と娘のブルース」
亜希子さんの状態を確認して安心したみゆきは、病院に付き添ってくれていた笠原部長と麦田店長が亜希子のヘッドハンティングについての話を耳にしてしまいます。
みゆきを一人にしないためにヘッドハンティングを断った亜希子。
自分のせいでこれまでの亜希子の人生の時間を取り上げてしまったと負い目を感じていたみゆきは、亜希子が本当に望む仕事をして欲しいとの思いから、ある計画を実行します。
それは大学に合格しているのに、不合格だったと偽ること。
つまり大学には行かない、ということ。
本当は第一志望の大学に合格したみゆきでしたが、亜希子さんやヒロキくんには大学に落ちたとウソをつきます。
大学には行かず麦田店長のパン屋に就職して独り立ちすることで、亜希子を心置きなく大阪の会社へと送り出そう、ということですね。
亜希子を思うがゆえに、全力で偽ることを決意したみゆき。
その行動はみゆきのことを思う良一や亜希子の行動に本当にそっくりです。
まさしく二人の子供ですね。
みゆきの将来を心配するゆえの「義母と娘のブルース」
大学に落ちたと偽るみゆきでしたが、家の届いた大学の合格通知書が見つかり亜希子にバレてしまいます。
第一志望の大学に合格しているというのに、なぜ落ちたなどとウソをつくのか?
亜希子は居ても経っても居られず、水垢離をしたり、みゆきが受けている受験会場に潜入したりと手を尽くすのですが・・・。
そして笠原部長に相談したところ、予想していたとおり、自分を大阪の会社に行かせるために画策していたことを知ってしまいます。
本当の親でないことにどこか負い目を感じている亜希子は、みゆきの異様なまでの気遣いに激しい悔しさを覚えます。
本当の親子であれば、そのように気遣われることもないはず。
もしもそんな気遣いでみゆきが大学にいくことをあきらめてしまったのでは、亜希子にとっては身を切られるよりもツライことかもしれません。
また死に別れた夫の良一にも顔向けが出来ないことでしょう。
亜希子はただひたすらみゆきの将来を心配しているだけなのに。
もうお母さんの時間を取り上げたくない!ゆえの「義母と娘のブルース」
大学に行かずに亜希子をヘッドハンティング先に行かせたいみゆきは、とうとう意を決して亜希子に話をします。
- 受けた大学にはすべて落ちてしまったこと
- 春からはベーカリー麦田で働こうと思っていること
- 一人暮らしをしようと思っていること
ここで亜希子は大学の合格通知書をみゆきに見せ、「人生の舵は自分で切る」とみゆきの気遣いを拒絶してしまいます。
しかしみゆきは亜希子の断固たる言葉を前にしても一歩も引きません。
過労で病院のベッドで眠る亜希子の頭に白髪を見つけたみゆきは、亜希子が着実に年を取っているということに強い焦燥感を覚えていたのでしょうね。
- 人生なんていつ終わるかわからない
- お母さんだって年を取るし、いつか死ぬ時が来る
- これからどんどん時間は短くなるんだよ
だからこそ亜希子にはやりたいことをやって欲しい。
特に
「私、もう、お母さんから時間を取り上げたくないんだよ!」
という言葉には、今まで自分のために時間を使わせてしまったことへの贖罪の気持ちが強く現れているよう。
そんなふうに亜希子への想いを吐露するみゆきの姿は見ていてとても心打たれるものがありました。
亜希子とみゆき、お互い愛するゆえの「義母と娘のブルース」
自分を育てるために、大好きな仕事、出世、そして全てを捨てた亜希子に対して、「自分にはこうすることしかできなかった」と想いをぶつけるみゆき。
そんなみゆきの想いを聞いた亜希子は
「では、もうキレイな言葉で語るのはよしましょう」
と前置きのあと、みゆきに本当のことを語りかけます。
- みゆきを育てた理由は単なる自分のエゴイズムであること
- 25歳のときに両親と死に別れたといったが、本当は小学校3年生のときだということ
- その後、祖母に引き取られ育てられたこと
- 祖母に「私はあんたよりきっと、ずいぶん先に亡くなる。だからあんたは誰にも頼らず自分一人で行きていけるようにならないといけないよ」と育てられたこと
- 祖母は中学生のころに亡くなり、施設に入ることになったこと
- 施設では一人で行きていけるよう必死に勉強したこと
- 高校卒業後、ミツトモに入社できたこと
- 入社後は豊臣秀吉のごとく必死に自己アピールして頑張ってきたこと
- 幸いそんな自分を認めてくれる人がいたこと
- 嬉しかった亜希子は24時間、仕事のことしか考えない人間になってしまったこと
- いつの間にか心にぽっかりと穴があいてしまったこと
- そんなときに声をかけてくれたのが良一だったこと
良一はみゆきの母親になる人が欲しくて。
亜希子は心の穴を埋める存在が欲しくて。
そんな亜希子の語る話に、みゆきは涙を堪えながら必死に耳を傾けます。
その時のみゆきの表情は見ているだけで胸が詰まってしまうような、まさに様々な想いがほとばしる素晴らしいものでした。
亜希子は語り続けます。
そしてみゆきと出逢ったこと。
- 生意気で
- 強がりで
- 可愛すぎて
はじめは娘だなんて思えなかったと語る亜希子。
しかし、良一に心配をかけまいと我慢しているみゆきを見て、
「この子は私なんだ」
「この子を安心させてやりたい」
「おもいきりワガママを言える場所を与えてやりたい」
「私がほしかったものを全部、この子にあげたい」
と思うようになったこと。
また、そうしているうちに、
「あなたが笑えば、私まで笑っているよう」
「あなたが傷つけられると、自分が傷つけられたかのような怒りを覚え」
「あなたが褒められると、まるで自分が褒められたかのようにまいあがり」
「私はあなたと自分を混同した状態に至りました」
と。
さらに亜希子は続けます。
「要するに、あなたを育てると口ではイイながら、私はその実、満たされなかった自分を憐れみ育て直していたのです。」
「あなたは私に利用されただけ。私はそんな女です。」
「だから、恩に着る必要など何一つないんです。」
そう語る亜希子に対し、みゆきは泣き笑いながら、こう返します。
「おかあさん。馬鹿なんじゃないの?」
「私が笑ったら自分が笑った気になるってさ」
「私が傷つけられたら自分のことみたいに怒るってさ」
「自分が欲しかったもの全部あげたいってさ」
「そういうのね、世間じゃ愛っていうんだよ」
「やりたいことやってよお母さん」
「お母さんがすごいねっていわれたら、私、きっと自分がすごいねっていわれたような気になると思うんだよ。」
「まだわかんないけど。お母さんとおんなじ気持ちがね、私の中にもちゃんとあると思うんだよ。」
そうして二人は泣きながら抱き合います。
「義母と娘のブルース」の中でも最高のシーンだったと思います。
私も何が何だかわからなくなるくらい、涙で顔がビショビショになってしまいました。
まとめ
ドラマ「義母と娘のブルース」最終回を見た感想について書きましたが、いかがだったでしょうか?
- 素晴らしい原作
- 素晴らしいキャスティング
- 素晴らしい脚本
- 素晴らしい音楽
- 素晴らしい・・・
挙げだすときりがありませんが、このように様々な素晴らしい要素が合わさったドラマ「義母と娘のブルース」は、2018年夏のドラマの中において、まさしく最高のドラマ作品だったと思います。
特に回想シーンの使い方は本当に秀逸でした。
しっかり「竹野内ロス」にもなりましたしね。
また「ニヤリ」とさせられる終わり方も「ぎぼむす」らしくてとても良かったです。
ドラマ「ぎぼむす」ロスに陥ってしまっている方は、今度は原作コミックスを読んでみてはいかがでしょうか。
「ぎぼむす」ロスは「ぎぼむす」の原作コミックスで癒やす。
これが最高の薬です。
コメント