「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を観てきました。
テレビシリーズを観てきた人なら、この劇場版は絶対に観るべき。
劇場版を観たい人は、まずテレビシリーズを絶対に観るべき。
そして「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」で「愛してる」の答え合わせ、いたしましょう。
このエピソードはあかん!
今回の劇場版はテレビシリーズの流れを色濃く受け継いでいるため、この作品を初ヴァイオレットにすることはおすすめできません。
実際、劇場版の冒頭はテレビシリーズの中でも屈指の涙腺崩壊エピソードのその後が描かれており……当時の感動が蘇るのと、新たな感動の相乗効果で、さっそく大量の水分を失うことになってしまった。
だってあのマグノリアの手紙やで?
アンの孫が出てくるんやで?
その孫が当時の手紙を読むんやで?
よくもまぁ、そんな展開思いついたもんだな!
そりゃ孫娘も旅に出るってもんですよ。
おそらく何の前知識もない状態で鑑賞しても、それなりの感動はするだろうけど……やっぱりこの作品は順番を追って観て欲しいですね。
それくらい、冒頭のエピソードはあかんかった。
ユリスの素直な気持ちに涙
少年・ユリスのエピソードが切なかったですね。
本当は家族みんな大好きなのに、素直になれず、ついついツラく当たってしまう……ユリスはそんな年頃の少年なんですね。
けれどもユリスに残された時間は少なく……ヴァイオレットに手紙の依頼をするんですね。
マグノリアと同じパターンですよ……しかもこんな年端も行かない少年が。
ただ、所持金が少ないため、本来ならば20文字程度が限界のところ……ヴァイオレットは子供割引と称して、少年のために手紙を書く。
エマージェンシー・プロビジョン……ヴァイオレットは着実に成長していってるな。
書面まで用意してからに。
少年に対する同情や哀れみは極力排除……あくまでも一人の人間としての尊厳を大切にするヴァイオレットの振る舞いは、ずっと病室に閉じこもるユリスにとっては、この上なく心地よかったんじゃないでしょうか。
残念ながらヴァイオレット自身は少年の約束に自ら立ち会うことは叶わず、新聞社の仲間たちに託すこととなるのですが……。
ヴァイオレット自身のことを自分のことのように喜ぶユリスの優しさや、親友リュカとの電話越しでの最後の会話など、死が近づくにつれ、だんだん、だんだん、素直になっていくユリスの様子がとにかくたまりませんでした。
また、死後、約束どおり届けられた手紙がもう……だめ、見てられない(涙)
でも、ユリスが望んだとおり、最後の手紙は間違いなく元気を与えるものだった。
短い人生だったかもしれないけれど……ユリスは家族の心の中でずっと生き続けていく……そう確信させられるような素晴らしいエピソードでしたね。
ついに見つけた「愛してる」
ヴァイオレットがついに「愛してる」にたどり着くことができましたね。
もちろん、ヴァイオレットの「愛してる」は少佐以外いないわけですが。
思えば、ヴァイオレットは少佐と生き別れて以降……ずっとずっと「愛してる」の答えを探し求め続けてきた。
たくさんの「愛してる」を手紙を通じて見てきたヴァイオレットは、自分なりに「愛してる」への理解を深めていくものの……きっと知れば知るほど、その思いは叶わないことを実感していたんじゃないでしょうか。
今やヴァイオレットは自動手記人形として数々の実績を残すだけでなく、本業以外の部分でも周囲から注目を集めるなど、かなり有名な存在になっている。
でも彼女の表情は以前と何ら変わらず、どこか空虚な器のようにすら感じられる。
そんな彼女が少佐の生存を知ってからは……一人の人間として激しく心を揺さぶられ……それはもう凄まじいまでに感情豊かになるんですよね。
予告編PVのヴァイオレットのワンカットでもかなりグラグラさせられたのに……本編ではそれ以上にヴァイオレットが慟哭する。
正直なところ、ヴァイオレット・エヴァーガーデンは悲しい結末を迎えるんじゃないかと、少し心配していたのですが……。
ここまできっちりと「愛してる」のアンサーが用意されてるとは思わなかった。
お互いに面と向かいあっても素直になれないのが人間。
けれども「手紙」なら不思議と素直な気持ちを伝えられる。
劇場版はそんな作品の原点に立ち返るのと同時に、「愛してる」の先に続く遠い未来まで見事に描ききってくれた。
今回の劇場版は140分という長時間に及ぶ作品ながらも……時間が経つのを忘れるくらい、夢中にさせてくれました。
観終わったあとは深い満足感に酔いしれた反面、これで本当に終わりなんだなぁ……と寂しくも感じました。
でも個人的にはヴァイオレットがついに本当の「愛してる」を見つけられたことを、ただただ寿ぎたいと思った。
そんなヴァイオレットにかける言葉は……もうひとつしか思い浮かばない。
ありがとう。
ヴァイオレット・エヴァーガーデン。
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